2022年末の日銀の金融緩和修正を契機に、金利上昇による収益改善への期待から、俄かに注目されている地銀株。
著名投資家である井村さんが、富山第一銀行の株を購入していた事が判明した事も相まって、ここ最近株価もかなり上昇し、年初来高値を更新している所も出てきています。
今回は、その地銀株の今後について考えていきたいと思います(なるべく簡潔にざっくりと書いていきます)。
※個人的見解を多分に含みますので、認識が誤っている箇所もあろうかと思いますが、ご承知おき下さい。投資はあくまで自己責任でお願いします。
・なぜ今地銀株が注目されているのか
・利上げが地銀の収益改善に繋がる理由
・地銀株が抱えるリスクについて
・地銀株の今後について
なぜ今地銀株が注目されているのか

まず、なぜ今地銀株が注目を集めているのか。
それは、先程も書いた通り、端的には金利上昇による収益改善への期待が高まっているからです。
もう少し、具体的に考えていくと
長きに渡る低金利時代において銀行は不利な状況にあり(理由は後述)、それもあって地銀株はずっと割安の状態で放置されていた
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そんな中、年度末の日銀総裁の交代による政策変更期待(利上げ期待)が潜在的に存在していた
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そこにきて、年末の日銀の金融緩和修正のサプライズにより、利上げがより現実的なものとなった
事から、収益改善への期待へと繋がったものと考えます。
利上げが地銀の収益改善に繋がる理由

次になぜ利上げが地銀の収益改善に繋がるのかを簡潔に。
これは地銀だけでなく、銀行業全般に言える事ですが、基本的に銀行の利益構造は、安く借りたお金を高く貸してその差額で儲けるというものです。
詳細は割愛しますが、簡単に言えば、利上げされると銀行は高い利子でお金を貸すことができるようになります。
一方で、銀行が借りる側の利子も多少は上がる(これは例えばあなたが銀行に貯金した際に受け取る利子の事です。とても少ないことが良く分かると思います)のかもしれませんが、銀行が貸す側程大きくなく、よって、借りる側と貸す側の利子の差が拡がるため、利回りが上がり、収益が改善される事になります。
そう考えると、今はマイナス金利ですから、お金を貸しても大した利息を得る事ができず、よって、長きに渡り銀行業は不利な状況にあったと言える訳です。
※利上げや利下げとは、日銀が金融政策として政策金利を上げたり下げたりする事を指します。
地銀株が抱えるリスクについて

では、利上げされればどの地銀も儲かって株価は上昇していくのか?と言うと、そういう訳ではなくリスクも抱えていると考えています。(現状、地銀株全面高と言っても過言ではないですが、このリスクによって、そのうち明暗はっきりしてくると思っています)
ここでは、そのリスクについて考えていきます。
外債のリスク
多くの地銀では、低金利時代を生き抜くために、その資金を運用する事で利益を確保しようとしてきました。
その中でも注目したいのが、米国債をはじめとする外債への投資で、ここにリスクを抱えていると考えています。
米国債を例にとると、米国は今絶賛利上げ中でそろそろ利上げ幅を縮小し始めている所ですが、短期間のうちに、歴史的にも稀に見る速度で利上げを実行しています。
そして、国債というのは、金利が上がるとその価格は下落する性質を持ちます。
よって、これまで米国債に投資していた地銀は、急激な利上げが発生している分、相当の含み損を抱える状況になる訳です。
但し、実は国債というのは満期まで持ち続ければ元本は必ず返ってきますので、いくら含み損を抱えていようが、無視して決められた期間保持し続ければ損をする事はありません。
だったら、何がリスクなの?と思いますよね。
まず1つ目のリスクは、ドル調達コストとの逆鞘です。
米国債へ投資するためには、円を担保にしてドルを調達する場合がありますが、この調達コストが国債の利回りより高くなる、所謂「逆鞘」になってしまい、こうなってしまうと持ち続ける限り実損が膨らんでいきます。
実際にこの状態に陥っている地銀も少なくないですが、そうなると、このまま損を垂れ流し続けるくらいならと損切りする(満期保有せずに損を確定する)という状況が発生する訳です。
そして、2つ目のリスクは、次の国内債権のリスクにも共通しているので、次で記載します。
国内債権のリスク
地銀は、外債だけでなく国内債権にも投資をしています。
国内債権なので、調達コストがかかる訳ではなく、先程書いたような逆鞘のリスクはありません。
では、どこにリスクがあるのか?
そもそも金融業を営む銀行には、多くの規制があり、その中に自己資本比率に関するものがあります。
ここも詳細は割愛しますが、この規制には、自己資本比率がそれ以上下がってはいけないラインが存在します。
また、規制には国際基準と国内基準があり、どちらが適用されているかは銀行により異なるのですが、国際基準を適用している銀行は、含み損をこの自己資本比率に反映させなければならないルールが存在します。
そして、含み損が大きくなるとその自己資本比率のラインに抵触してしまう可能性があるため、含み損を無視して満期保有するという事ができない状況が発生し得る訳です。
このリスクは、外債でも国内債権でも共通のものですが、今後日本も利上げがされていくとすると、国内債権に多く投資をしている、かつ国際基準を採用している銀行では、外債と同様、大きなリスクになる可能性があると考えます。
地銀株の今後について

最後に本題ですが、では、今後の地銀株はどうなっていくのか?
個人的には、まだ地銀株が上昇する余地は多く存在すると思っています。
これから収益が改善されていくであろう中において、まだまだ割安な水準だと考えているからです。
また、地銀株は時価総額が小さい所も多く存在する事が、個人的には好きな所でもあります。
但し、先程も書いたように、地銀株全面高のような現状から、徐々に明暗は分かれてくるのではとも思っています。
なので、マクロ的には日銀の政策がどうなるか?を注視(そもそも利上げされないと収益も改善されていきませんからね)しつつ、個別としては、リスクの所で書いた外債や国内債権への投資の状況、また、時価総額やPER・PBR、自己資本比率や還元性向なんかも比較しながら、ここ!と決めた所に投資していきたいですね。
今回の内容が少しでもあなたのお役に立てれば幸いです。
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